ISBN | 978-4-87571-875-8 |
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書籍コード | 875 |
判型 | A5版 |
頁数 | 242 |
定価 | 3,080円(税込) |
本書は、経済学各論の中の経済地理学のうちの商業立地論の専門書です。2000年度ノーベル経済学賞を受賞したD. McFaddenの確率選択モデル(多項ロジットモデル)をGIS(パソコン内の電子地図)上で、消費者の店舗選択問題に応用すると、各地点の統計的単位(丁目など)における各店の顧客の割合(選択確率または顧客率)をよく説明でき、実証的科学的商圏モデルであることが判明します。つまりロジットモデルをGIS上で店舗選択問題に適用すると、店舗選択確率等高線の形で各店の商圏を推定・予測できます。
このことは消費者が、集計的に見ると、店舗選択に関して目的合理的である、つまり効用最大化選択を行っているということを意味します。“目的”の理解には“店舗とは何か”という問題の解決も含まれています。
実証的科学的商圏モデルは世界で初めてのモデルであり、これによって小売業者は、立地状況や小売空間競争状況ならびに顧客デモグラフィックスに関して、従来よりも推定精度の高い解析情報を得られ、より的確な立地判断や個店別政策を立てることができます。本書では実務家を念頭に、このモデルに関する理論的、具体的説明が詳しく書かれています。
このモデルは、消費者は店選択において、常に目的のもとに効用最大の店を選択することを示していますが、従来の地理学の小売モデル(発生制約型空間的相互作用モデル)とマーケティング論のハフモデルの前提は、消費者は各店の定数効用に従ってコイントスで店を選択しているということであり、両理論は全く相容れないので、このことに関して詳しく議論されております。
従来、規範的説明に終始していた傾向のある中心地理論、商業立地論、業態論、商圏構造論などに関して、実証的科学的商圏モデルによる新しい視点から、批判的に検討されております。
従来の立地論関連の書物は、諸学説紹介書がほとんどでしたが、本書は確率選択理論に関する紹介を除けば、オリジナルな立地論と商圏モデルならびに諸学説批判書となっている点が特徴的です。また小売業に関する具体的な問題を論じているので、ビジネス書の性格も持っています。
本書のもう一つの主題として、諸記号(事物、事象、概念記号、文字記号、数学記号)をめぐって専門家や消費者がどのように思考をめぐらすのか、ということに関する考察があります。学説批判は部分的にこの記号論的視点からも行なわれております。
はしがき
謝 辞
序 章
第1章 商業立地論の諸問題
第2章 業態論と業態盛衰論と小売競争の諸問題
第3章 ハフモデルと定数効用モデルの再検討
第4章 定数効用モデルとランダム効用モデルとその基本的な特性
第5章 店舗選択問題への個人ロジットモデルの応用例
第6章 集計型ロジットモデルとGIS環境下での商圏モデル
第7章 GIS集計型ロジット商圏モデルの具体的構築と実証検証
-GMS選択の場合-
第8章 食品商圏解析の概念と方法と空間消費吸引率の諸関係
-GMSの食品商圏およびスーパーの商圏-
第9章 人工的中心地の商圏の内部構造と小売空間競争の特徴
第10章 消費者の合理性と自然的思考と選択理論の関係
参考文献
索 引